概要

当研究室では,人工衛星や惑星探査機などの宇宙機のためのエンジン(宇宙推進機)に関する研究を行っています.特に,従来の化学反応を用いた推進機(化学推進)ではなく,推進剤にプラズマを用いる電気推進機や,レーザーを用いるレーザー推進などの研究を行っています.

 

ホールスラスタ

ホールスラスタは宇宙機用電気推進機の一種です.作動原理はイオンエンジンなどと比べて少し複雑で,推進機内部の半径方向の磁場と軸方向の電場の直交場にてイオンを生成,加速・排出するというものです.原理上,イオンエンジンよりも推力密度を大きくすることが可能であるため,推進機自体をコンパクトにすることが可能です.

現在では,宇宙太陽光発電衛星(SSPS)などの大型構造物構築のための物資輸送や,深宇宙探査などのミッションに使用することが想定されていて,大出力化することが必要となってきました.その際,推進剤はどうするのか,クラスター化が可能であるのか,プラズマと接する内壁面の損耗をいかに抑えるのか,推進機外部に漂うイオンが宇宙機に影響を与えないためにはどうすればよいのか,などの課題に取り組んでいます.

 

 

 

Magneto-plasma-dynamic (MPD)スラスタ

MPD推進機は,磁場と電流の相互作⽤でプラズマを加速・排出する推進機です.推力密度がホールスラスタよりもさらに高く,今後の深宇宙探査向けにと期待されていますが,推進効率の低さと電極の損耗の大きさから,未だ実用化されていません.

推進効率を高くする指針を得るため,内部の物理現象を明らかにすることで効率低下のメカニズムを解明しようとしています.

 

 

 

レーザー推進

レーザーアブレーション推進とは,固体推進剤にレーザーを照射することで,推進剤を蒸発させ,その反作用で推力を得る,というものです.

照射したレーザーエネルギーのうち,何にエネルギーがどれほど使われるのか,どうすれば噴出ガスのエネルギーに変換される分が大きくなるのか,など,基礎的な現象を明らかにしようとしています.

また,推進機としてだけではなく,宇宙のゴミ(スペースデブリ)の除去に応用するための研究も行っています.